ヘンプの復活:環境にやさしい未来の礎
ヘンプ(おおあさ)は、古代から人類と深い関わりを持ってきた作物です。
繊維は衣服やロープ、船の帆や建材として、種は食料や油、医薬品として広く活用されてきました。その歴史は紀元前8000~5000年の新石器時代までさかのぼります。私たちがバッグや絵を描く際の布地として親しんでいる「キャンバス生地(帆布)」も、ラテン語でヘンプを指す「cannabis」という言葉に由来しています。また神社のしめ縄もヘンプを材料にしています。
中央アジアが原産とされるこの作物は、インドや中東、アフリカや地中海地方にまで広がり、古代エジプトやギリシャ、ローマ人の生活に欠かせないものになりました。
日本でも縄文時代早期の遺跡からヘンプの実が見つかっており、食料や油として利用されていたことがわかります。また第二次世界大戦後に規制が行われるまでは、日本全国にヘンプ畑=麻畑が広がっていました。「麻布(あざぶ)」「麻苧(あさう)」という地名も、かつて麻(ヘンプ)を植えて布を織っていたことに由来しています。
近年では科学技術の進歩により、ヘンプは新たな注目を集めています。木材や石油由来の繊維よりも環境負荷が大幅に少ないことから、ヘンプベースの素材は住宅や自動車、家具など、さまざまな分野で活用されるようになったのです。
当社が取り扱っているサステナブル建材「ヘンプクリート (ヘンプ+コンクリート)」もその1つ。ヘンプクリートはヘンプのオガラと呼ばれる繊維質と石灰を混ぜ合わせて作られており、従来の建材から発生する化学物質による室内空気汚染とそれに伴う健康影響(=シックハウス症候群)を防ぐという大きなメリットがあります。
さらに、この素材は断熱性や耐火性、防音性を兼ね備えており、室内の環境を快適に保つことができるのです。
心地よい住まいが地球環境の保護にもつながる。ヘンプの活用法を知ることは、私たちの未来をより持続可能なものにするために、大切な意味を持っています。
↑ヘンプクリートの埋め込み作業。このあとコーティング材や漆喰などを重ねていきます。